English

染色体とは

すべての生命体は、DNA/タンパク質分子で構成される「染色体」にその遺伝情報が収納されています。真核生物細胞中で細胞周期や分化に応じて遺伝子発現を制御し、遺伝情報を次世代細胞に継承させるためには「染色体」形態の構築と維持が必須です。

ヒトゲノムDNAは30億塩基対(長さ約1m)から構成されていますが、23対46本の線状染色体に分かれています(常染色体22種と性染色体2種(XまたはY))。

ヒトゲノム計画による解析の結果、ゲノム上には遺伝子約22,000個が存在すると言われています。これら多数の遺伝子は、言わば染色体という乗物の乗客ですが、ゲノムの5%を占めるにすぎません。残る95%を含む染色体の行動や構造そして機能を知ることは多様な遺伝現象の機構の解明にも深く関わっています。

△TOPへ

ヒト人工染色体とは

人工染色体とは、細胞内で人工的に構築した極小の染色体で、染色体の維持・継承に関わる機能を持つために宿主の細胞染色体とは独立に存在できます。

染色体の機能領域の研究はまず出芽酵母を用いて行われ、上記の三領域の配列情報を基に人工的に構築したDNA分子を酵母内に導入し、酵母人工染色体(yeast artificial chromosome ; YAC)が形成されました。また原核生物では、Fプラスミドの複製分配に関与する遺伝子を組み込んだ大腸菌プラスミドベクター、細菌人工染色体(bacterial artificial chromosome ; BAC)が作製されました。

このように染色体の機能領域を解明する研究過程において、染色体の次世代に伝達される機構を細胞内で再構築する「人工染色体技術」は確立しました。YACやBACは大きなゲノム断片をクローニングできる遺伝子導入ベクターとして、ゲノム解析や遺伝子改変動物の作製など遺伝子工学の基礎技術として1990年代から広く利用されています。

一方、哺乳類などの高等真核細胞では複製起点とセントロメアのDNA配列は解明されていませんでしたが、当社の創設研究者である岡崎等は、哺乳類細胞の複製起点やセントロメア機能を担うDNA 配列の限定や機能構造の研究を進め、ヒト染色体のセントロメア領域に由来するI型アルフォイド配列を基にヒトや哺乳類細胞中で安定に分配・維持されるヒト人工染色体(human artificial chromosome ; HAC)を構築する方法を世界に先駆け確立しました。HACは宿主細胞中で宿主細胞染色体に取り込まれることなく独立に存在し、宿主細胞染色体と同調して倍化・分裂し、次世代細胞に安定に受け継がれてゆきます。

△TOPへ

 

HACに関する参考文献

  1. Ikeno M, et al., "Manipulating transgenes using a chromosome vector." Nucleic Acids Res. 2009 Apr;37(6):e44. Epub 2009 Feb 17.
  2. Ito M., et al., “Immortalized hepatocytes using human artificial chromosome.”, Cell Transplant., 17, 165-171, 2008
  3. 池野正史, “ヒト人工染色体ベクターによるトランスジーンの活用”. バイオテクノロジージャーナル, 7, 564-568, 2007
  4. Suzuki N., et al., “Human artificial chromosomes constructed using the bottom-up strategy are stably maintained in mitosis and efficiently transmissible to progeny mice.”, J Biol Chem., 281, 26615-26623, 2006
  5. 池野正史他, “ボトムアップ方式によるヒト人工染色体ベクター構築と遺伝子発現”. Molecular Medicine, 42, 306-311, 2005
  6. Ikeno M., et al., “Generation of human artificial chromosomes expressing naturally controlled guanosine triphosphate cyclohydrolase I gene.”, Genes Cells., 7, 1021-1032, 2002
  7. Ikeno M., et al., “Construction of YAC-based mammalian artificial chromosomes.”, Nat. Biotechnol., 16:431-439, 1998

△TOPへ

Copyright (C) 2006 Chromo Research Co Inc. All Rights Reserved.